第142章 白い箱
12月20日
私は実家に借りたキャリーバッグを片手にワクワクとした気持ちで帰宅した
明日はいよいよ彼との北海道旅行
アルバイト先に二日間休みを貰い三泊四日の雪国旅行
想像するだけで頬が緩み鼻歌を歌いながら作った夕飯の唐揚げとタコの酢の物をちゃぶ台に並べた後に数日前に届いていた旅の行程を眺める
実の所、今回の旅行はフリープランでは無くツアー旅行なのだ
当初の予定では彼と二人きりを想定していたのだが雪国での運転は経験が無いという点や、行きたい場所が多過ぎて巧く纏まらないといった問題が発生しツアー旅行に落ち着いた
他人との集団行動に彼は平気だろうかと些か不安を感じるが膨らむ妄想は不安の反面楽しい物ばかりだった
旅のしおりを読み耽り北の大地に思いを馳せているとガチャガチャと玄関から音が成り冷たい外気を引き連れた彼が帰宅した
「お帰りなさい!」
「ただいま、良い匂いだね」
「今日は唐揚げです!」
「ふーん。」
間延びした声と共に真っ直ぐリビングへやって来た彼
「……?」
しかし普段と違う点が一つ
彼は右手に白い箱を持っていて私は其れを見詰める
彼が何かしらを持ち帰るなんて軍曹以来かもしれない……
中身が何なのか問う前に
「まだ食べちゃ駄目。これは食後」
なんて言われてしまったが
彼の台詞や箱の形状から察するにどうやら中身はデザートの類いらしく、白い箱は冷蔵庫へ入れられた