第12章 【徳川家康】Vampirism(ヴァンピリズム)
「ちょ、ちょっと!タンマ、一旦止まって!!」
その細腕から、想像出来ないような力で押し倒された俺は、獰猛な光が宿った彼女の瞳をじっと見返しながら叫んだ。
彼女が俺の体にのしかかって切なげに見下ろす、それはそれは願ったり叶ったりなシチュエーション、なのに。
いつもと違う雰囲気を漂わせる彼女の手首を、痕がつきそうなほど全力で掴んだ。
モノも言わず、大きく開かれたままの彼女の口内から、ちらりと覗く犬歯…
「千花!!!」
自分が獲物だと気付き怯える、小動物とはこんな気持ちだろうか。
思わず震えた声を大きくあげると。
千花がふっ、と一瞬目を閉じた。
そして、次に目を開けた時には、もういつも通り――
「い、い、いえやす…!
うわーーーん!!ごめんね、私、我慢出来なくて…!!」
千花は先程までの勢いはどこへやら、ふらふらとよろめく様に身を起こすと。
膝を抱えて、その場に蹲りめそめそと泣き出したのだった。