第11章 続、若君と女中(薬師視点・謙信・かすが)
時は、けっこう平和な戦国乱世。
「夜分に失礼いたします。謙信様、急ぎご報告したいことが…!?」
障子を開けた向こう側に。
薔薇の花が溢れていたら、どうしますか?
「わたくしには、おまえがひつようです…」
「あぁ……」
謙信様と、忍装束のかすが嬢…?
ええーと。
女中さんの格好をしているかすが嬢と会ったので。
謙信様なら何か気づいているかもしれないけれど一応、報告しておいた方がいいかなー…と思って来てみたのですが。
「おや、どうしたのです?とうときひかりよ」
「いえ……そちらのお嬢さんについて、お話しようかと…」
「あっ……あなたは…昼間の…!」
すでに出逢っていたようです。
まぁこの様子ですと、どうやら何事もなく無事だったみたいですね。
よかった、よかった。
「ふふ、わざわざ きてくれたのですか」
「そのつもり、だったのですけれど…一足遅かったようですね」
「…?その、お姿は…」
あー、驚いてる、驚いてますよ。
ですよねぇ…昼間会ったときとは違い、今は薬師仕様の女物の着物ですから。
「かのじょの すがたが、どうかしましたか?つるぎよ」
「あー、いえ、そのですね?謙信様…」
「彼女!?………じゃあ……あれは、すべて、嘘?………そんな……」
なぜか愕然とした表情で、美しい瞳に涙を滲ませるかすが嬢。
せめてこのとき、嘆いた彼女の言葉の意味を理解していたならば。
もう少し、友好的な関係を築けたのかもしれない。
―――なんて思っても、後の祭り。
ああ、かすが嬢の微笑みよ…戻ってきてください!!
▽・▼・▽・▼・▽
薬師さんとかすがの出会い、補足小話。
心を許しかけていた分その反動も大きく、今ではつれない態度しかとってくれなくなった。
せめてずっと男装していれば、その後の対応も違ったかもしれません。