【ハイキュー!!】Assorted Box 短編集
第6章 彼女の自信〜帰り道で〜 (月島 蛍)
「私…月島君の彼女で居たい。」
背中に回った月島君の手にギュッと力がこもるのがわかる。
「和奏。下の名前呼んで。」
「えっ…恥ずかしいよ。月島君のままでも…。」
いつもより優しい月島君の声に、全身の体温が上がっていく。
「なに?僕は好きな子に下の名前で呼ばれたいとか思っちゃ駄目なの?」
今…好きな子って言った!
いや、彼女だから…当たり前なのかもしれないけど…月島君の口からこんなに立て続けに聞けることは、もう一生ないかもしれない。
「…け…蛍…君。」
顔の血管が切れるんじゃないかと思う。
きっと私、茹で蛸よりも真っ赤になってる。
それだけ頑張って言ったのに、無言のままの月…蛍君を恐る恐る見上げる。
この…表情。
そう、こんな表情をして欲しかったんだ。
目の前に少し顔を綻ばせて、満足げに微笑んでいる蛍君がいる。
あんなにどうしたらいいのか悩んでいたのに…こんなに簡単な方法があったなんて。
「和奏。」
近距離で目が合ったまま名前を呼ばれれば、心臓が跳ね上がりそうな程に脈打った。
「蛍君…。」
ゆっくりと近付いてくる蛍君の顔。
あっ、キスするんだ…。
普段なら全然わからない蛍君の行動が手に取るようにわかる。
ゆっくり瞳を閉じると、唇に温かい感触が触れた。
私は私のままで、蛍君の彼女で居ていいんだと…蛍君がそれを望んでくれているのだと伝わってくる。
初めてのキスの時とは違う。
何だか、幸せな気持ちだ。
「ってか、路チューとか…何してるんだろう。排球部の人達に見られたら最悪だ。」
いつも通りの無表情に戻った後に蛍君が言った。
「大丈夫!私が皆に、蛍君もデレる事があるって説明するよ!」
「…それは、本当に怒るよ。」
end.