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まだまだ青い白鳥たち

第6章 奪ってもいいか


無事に男バレ分の食事も終わり、私達女バレの一年生は遅めの入浴となった。本当ならキャッキャとお風呂を楽しむ場面だろうけど、私達は中等部から知り合いの子が殆どだし、いつも練習後に学校のシャワールームを使う子が大多数で、お互いの裸など見慣れすぎている。とくに新鮮な楽しさなど何も無い。まあ運動部の女なんてこんなもんでしょ。


流れ作業で体を洗い、普段のシャワールームにはない大きな湯舟に浸かる。慣れない給仕作業とバスの移動で結構疲れていたみたいで眠気がどんどん襲ってくる。


「…緑川さん」
「あ、成田さん」


顔の下半分が湯に浸かったところで成田さんの声に助けられる。


「成田さん今日はお疲れ。ごめんね、予想外の仕事まで入っちゃって」
「ううん、またネタが一つできたから全然大丈夫!あのさ、さっき脱衣所入る前に天童くんに会ったの。お風呂から出たら旧館に繋がってる渡り廊下に来て欲しいって」
「…渡り廊下?」


もしかしてあの雑草が凄かったボロい廊下のことかな。確かにあそこなら先生とか他の部員達も来ないだろうけど。


「うん、わかった。伝言ありがとね」
「…天童くんいつもと別人でビックリしたよ。あれはやっぱりモテるわけだよね」


…いつもと別人って意味が分からないんだけど、とにかくなんかヤバかったんだろうな。天童くんに会うのを楽しみにしておこう。


大浴場から出て髪を手早く乾かして、用意してきたタンクトップとパイル生地のショートパンツを履く。動きやすくて涼しいし、合宿にはピッタリだと思って持ってきた。周りのチームメイト達も割と似たような寝間着を身につけていた。普段ジャージばかりだから、こんな時くらい女子っぽいものを選んじゃうのは運動部あるあるだと思う。


「…リカコごめん、ちょっと天童くんと会ってくる」
「あー…OK。1時間後に部屋で点呼あるからそれまでに戻んなよ」
「了解」


一応リーダーのリカコにも伝えておいて私は脱衣所を出た。途中すれ違う男バレの先輩達にも「お疲れさまです」と挨拶をしながら渡り廊下を目指して早歩きする。牛島から貰ってしまったこの心臓の煩さを一刻も早く消し去りたかったから。
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