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まだまだ青い白鳥たち

第5章 女子バレー部次期エース・諸越リカコが想うこと。


「だよなぁ、天童だもんなー…」


瀬見が悲しそうな声色で呟く。そりゃ誰だって思っていなかった。なつみが天童と付き合うこと、それと天童が想像以上にマジだったってこと。いつも若利くん若利くんってウルサイから、単に牛島の片思い相手が気になっただけ…って思ってたのに。


「…あんたは動かなくていいわけ?」
「俺はそんなに器用じゃねぇよ。全国獲るために白鳥沢に来たんだ。余所見してる余裕ない」


そう語った瀬見の横顔はいつになく格好良く見えた。実を言うと私、諸越リカコはちょっぴり瀬見英太が気になっている。気になってるって程度で好きとかではないんだけど。


新入生男バレの練習試合を初めて見た時、セットアップやトスに意志が込められてて、瀬見は皆を引っ張っていくタイプの選手だと思った。同世代で言うと北川第一の及川みたいな。北川第一はずっとうちの学園と決勝で当たっていたから印象深い。


なつみの相手チームの動きをよく読んでいるようなセットアップも好きなんだけど、瀬見みたいな力強いトスも打ってみたいと思った。瀬見はきっと三年生になった時レギュラーに入るんだろうな。直感でそう感じた瞬間だったんだ。


「…だよね。女バレも全国目指すよ。男バレのお荷物なんて言わせない」
「じゃ、鷲匠先生んとこ戻るぞ」
「げっっ!忘れてた!」


ハハッと笑って瀬見は階段を降りていく。ジャージの後ろ姿を見つめながら、ふとさっき見たキスシーンを思い出す。瀬見はどう思ったんだろうか。踏み込んでくつもりはないらしいけど、やっぱりなつみが好きなんだろうな。まあそんなことをグルグル考えても仕方ないから私は今日もスパイクをいっぱい打とう。


「瀬見!今度トスあげてよ」
「なんだよ急に」
「いいじゃん、トスぐらいあげてよ」
「俺は女バレとしばらく練習禁止なんだよ」


そういえばこの間の男女合同試合の時も瀬見は得点係をやっていて、試合に出ていなかったことを思い出す。


「…なんかあんた、色々と運悪いよね…」
「うっせ」


でもきっと瀬見はレギュラーになれるよ。そう思ったけど私は言わなかった。瀬見の目元がいまちょっと泣きそうに見えたから。
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