第2章 制服の羽根(月島)
「ねえ山口、ちょっとあれ見て」
「ん?」
「天使、さんの。背中。早く」
「背中?」
「なんかあるよね。変なの付いてない?」
「何も無いけど」
「は?ちょっと真面目に見てる?」
「見てるけど、、え、逆に天使さんの背中に何かあるの?」
キョトン顔で山口に返される。
やっぱり僕以外の人間には見えていないらしい。
は?本当になんなの。
どういうこと。
どういうことなの。
キャパオーバーどころの騒ぎじゃない。
翼を持つ人間なんぞこの世に存在してはいけないはずだ。
それも僕にしか見えないなんて。
え?は?
頭爆発してこの瞬間に死にそう。
「つっきしまくーん!」
天使が振り返り、僕の方を見る。
彼女は悪戯っぽい顔で、口パクだったけど確かにこういった。
__な、い、しょ、ね。
男子からのやっかみも、女子たちのざわめきも。
今の僕には近いようで凄く遠くから聞こえた。
代わりにいい逃げかのように内緒ね、とだけ言って去っていった天使のその悪戯っぽい顔がいつまでも離れずに、僕の頭を占めていた。
fin.