第10章 赤いチューリップ
「そういう訳だから、もうボクに構わないで」
「でも……」
龍の悲しそうな声が聞こえる。
「おい、龍。俺のスマホ取れ」
「え、あ、はい……」
こんな時にスマホ?
楽は一体何を考えているんだか。
楽はボクの方は一切見ずに忙しそうに指を動かしている。
「楽……?」
龍が声をかけても無視。
「ん?あ、悪い。まあ、天。お前は取り敢えず明日に備えて寝とけ」
「そんなのわかってるよ」
ボクはおやすみも何も言わず、ベットに寝転んだ。
ー次の日ー
「天」
「なに」
「お前、今日の夜ここに来いよ」
スッとスマホの画面がかざされる。
「BAR?別にいいけど、なんで?」
「大切な話があるんだよ。貸切にしてるから夜8時にちゃんと来いよ」
怪しい。
大切な話なんて楽がすぐに話さないわけが無い。
「………ねぇ、楽。ボクに何か隠し事してない?」
「はぁ?何言ってんだ。お前相手にする隠し事なんて持ってねぇよ」
「そう……。ねぇ、龍」
「はい!?」
「ほんとに隠し事無いの?」
「お、俺は知らないよ。俺も天みたいに言われただけだから」
「ふーん……。ま、いいよ。分かった」
ボクはそれだけ言うと、椅子に深く腰掛け上を見上げた。
ここのところよく疲れる。
花を吐いているせいだろうか。
彼女が好きだと確信した時からどんどん吐く頻度が上がっている。
「どうにかしなきゃ……」
そう小さく呟いた。
「ねぇ、天。一度聞いてみたかったんだけど、東雲さんのどんなところが好きなの?」
「ごふっ!!」
龍がこのことを聞いてきた時、ボクは水を飲んでいた。
よってむせた。今も咳が止まらない。
「ごほっ、ごほっ……はぁ、龍、急に何を聞くの」
「え、だって知りたいだろ?」
「………嫌だよ」
「面白そうじゃねぇか!」
「………蕎麦屋は黙ってて」
「ああ!?」
なんでこの大人たちは男子高校生みたいなノリをしてくるのだろう。
楽と龍と長く一緒にいるとわかる。
意外とこの2人はしつこい。特に楽。
「………れ………」
「もっと大きな声でねぇのかよ」
「だから………ぼれ………だって」
「ごめん天。本当に聞こえないんだ」
「………一目惚れした………」
ボクはこの発言をした後、ひたすらからかってくる2人を床に2時間正座させた。
………二度とこんなこと言わないと心に決めた瞬間だった。
