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12色のアイ

第10章 赤いチューリップ


ー収録後ー

「天。いい加減話せよ」
「何を」
「おまえが何に苦しんでるのかだよ」
「余計なお世話」
「このクソガキ……っ、人が心配して言ってやってんのに」
「心配してほしいなんて言ってない」
今にも取っ組み合いになりそうな雰囲気を遮るように龍が声を発した。
「まあまあ、2人とも落ち着いて」
「ボクは落ち着いてる」
「俺もだ」
「と、とりあえずここだと話しにくいからオレの家に来ない?」
「「………」」
龍は無言は肯定と認識したのかパンっと手を叩き「決まりね!」と言った。

ーin龍之介宅ー

「天が片想いしてるのって小鳥遊事務所の東雲さんだろ?」
「………随分とはっきり言うね」
「あれ?違った?」
「………」
「合ってる、だとよ」
「ちょっと、ボクまだ何も言ってないんだけど」
勝手に話を進めようとする2人をジロリと睨む。
「でも、合ってるんだろ」
「………そうだよ」
「そうか……でも、なんだか意外だなぁ」
「何が?」
ボクがそう聞くと、龍はまっすぐこっちを見た。
「だって、天は完璧主義だろ?だから、もし好きな人ができてもファンが一番ってすぐに諦めると思った」
ボクは何も言えなかった。
その通りだ。
ボクは龍の言った通り彼女を好きになってはいけなかったはずなのに………。
「………いつの間に……」
「おい、天、しっかりしろ」
ボクはいつの間に彼女をこんなに好きになっていたんだろう。
そう思うと、また胸が苦しくなった。
「う、おぇ………」
はらはらと赤い花びらが溢れる。
「また……!天、大丈夫か!?」
「天!おい、天!」
2人の声はボクの耳に届かなかった。
ボクが今感じているのは彼女への恋心と吐き気。
もし聞こえていたとしても返事なんかをする余裕はないだろう。
ボクは前かがみになったまま、唸るように呟いた。
「た、だ……あの人を、想う、だけで……それだけで、よかったのに………うぅ………」
「おい!天!もう喋るな!」
ボクの口からはらはらと止めどなく花びらが溢れる。
「好き、が、こんなにっ……苦しいなんて……」
好きにならなければよかった。
その言葉を言う前にボクは花を吐いて意識を失った。
ただ、今吐いたのは花びらではなく、茎や葉がついた花そのものだった。
「………赤いチューリップ………」
楽がボソリと呟いた。


赤いチューリップの花言葉「愛の告白」
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