第4章 脱両片想い
「う、そ……なんで…打ち上げのはずじゃ……」
「電話した時、元気がなさそうだったから早めに抜けさせてもらった」
驚く私とは反対に、天くんはいつも通り冷静だ。
「キミ、ボクや九条さんがいない時、いつもこんなことしてるの?」
「こんなことって…きゃぁ!」
私はようやくショーツしか履いていない状態だった事を思い出し、急いで布団を身体に巻きつけた。
「い、いつからいたの……?」
「キミがボクの名前を呼びながらオモチャを使ってる時くらいから」
身体中の血の気が引くのを感じた。
恥ずかしいを通り越してもう死んでしまいたい、というのが今の私の正直な気持ちだ。
だって、好きでもない女が自分の名前を呼びながら自慰をしているなんて気持ち悪くて仕方がないだろう。
「ごめ、なさい……ごめんなさい……」
自分で自分の首を絞めてしまったように思え、また涙が溢れてきた。
「だからさ、なんで謝りながら泣いてるの。……キミ、ボクのこと好きなんでしょ?だったら『ごめんなさい』じゃなくてもっと別の言葉があると思うけど?」
天くんが一歩、また一歩と近づいてくる。
私は無意識に後ろに下がるが、悲しいことにすぐに背中が壁に当たってしまった。
トン、と天くんが右手を壁についた。
「ほら、その可愛い口で言って?」
天くんの左手が私の唇に触れる。
「わ、私・・・天くんのことが、ずっと前から…好き、です」
「ふふっ。よくできました」
にっこりと優しい笑みを天くんが浮かべたかと思うと、だんだんと天くんの顔が近づいてきた。
「ご褒美、あげる」
「え、天く、んっ」
目の前には天くんの顔のドアップ、唇には柔らかい感触。
何が起こったのか理解できたのは天くんが顔を離してからだった。
「な、んで……」
「何でって、好きな子が可愛い顔して告白してきたらキスぐらいしたくなるでしょ」
「好きな子………?」
「そう。ボクもキミが好きだよ。もちろん恋愛感情として、ね?」
もう一回天くんがキスをしてくる。
私は嬉しさと恥ずかしさでまた泣いてしまった。
「…泣き虫」
天くんが私の涙を拭う。
その行為も天くんが私に向けてくる視線もとても優しくて、涙を止めることは不可能だった。
「う……私が、泣き虫なのは…天くんのせいだもん」
「じゃあ、お詫びに泣き止ませてあげる」
「…どうやって?」
「こうやって」