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あまりにも優しくて、どこまでも冷静な

第3章 後悔、する?


「後悔、しないな?」

 ハッと、私は顔を上げた。
 伊豆くんはアフターピルのシートをポケットへしまうと、コンドームを開け始めた。

 カラフルにやたらと綺麗な、四角い包装。

 伊豆くんは床に座ったまま私に背を向け、腰のベルトを外した。ズボンと下着を少しだけズリ下げ、ゴソゴソしている。

「いいぞ」
「えっ?」
「ゴム、つけ終わった」
「あっ…」

 そうか。いいんだ。伊豆くんとセックスしても…いいんだ。
 嬉しい。すぐにでもしたい。伊豆くんが欲しい。私の身体が伊豆くんを求めている。こんな淫らな私、全部、全部全部全部、薬のせいだ。

「こっちにこい」
「えっ…あっ」
「ほら」

 伊豆くんにうながされ、彼の目の前まで歩み寄った。目線をおろすと、伊豆くんの男根がそそり立っているのが視界に入る。
「ヒャッ…」
「な、なんだよ」
「初めて、見た…」
「なんだよ。さっきまで、欲しいとか言ってたのは桃浜だろ。土壇場になって怖くなったか?」
「…」
 返事ができなかった。薬のせいでいまも身体は火照っている。刺激が欲しいのは間違いない。けれど、けれどもやっぱり、少し戸惑いもあった。
 何も言えない私に、伊豆くんは優しく言った。
「やめるなら、今のうちだぞ」

 私は首を横に振った。

 伊豆くんは少しため息をつくと、私の腰を掴んだ。
「オレの脚の上に乗って。桃浜が自分で挿れるんだ」
「えっ?」
「お前、さっきから”え”って言ってばかりだな」
「えっ、だって…普通、寝てするものじゃないの?違うの?」
「寝たら、オレがお前の…あそこ見ないといけないだろ。それだと桃浜が可哀想だからな。別にオレたち、付き合ってるわけでもないのに」
「そんな…」
「それに床は固いし冷たいし。あと、桃浜初めてなんだろ?初めてだと痛いって聞くから、桃浜が自分で加減できた方がいいんじゃないか?嫌になったらいつでもやめていいから」
「伊豆くん…」

 私はまた、彼にギュウと抱きついた。怖くなんてない。後悔しない。伊豆くんはこんなに私のことを案じてくれている。この人に初めてを捧げることに、後悔なんてするもんか。
 例えこの衝動が、薬のせいであったとしても。
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