【YOI】ほろ苦く、そして甘い予感【男主&ユーリ】
第3章 再会と甘い予感
感傷に浸る暇もなく空港で礼之達と別れたユーリは、ラウンジで暫し時間を潰してから予定の便に乗り込んだ。
広いシートでひと息吐いた後、客室乗務員からウェルカムドリンクを受け取ると、ふと何かを思い出したように先程空港で礼之に貰った袋を開ける。
すると、中から可愛らしいクリスマスアイテムのデザインされたパッケージが現れた。
「キャンディ…いやチョコレートか。…ん?これは…」
パッケージの文字と中身、そしてそこに同封された小さなクリスマスカードに気付いたユーリは、次の瞬間ワナワナと唇を震わせた。
東京行きの新幹線に乗った礼之が、無事に純の勧め通り車窓から富士山の写真を収めてホクホクしていると、スマホからメッセージ音が鳴り響いた。
『てめぇ、一体どういうつもりだ!』
『ひょっとして、機内にWi-Fiサービスついてるの?良かったね』
『俺の質問に答えろ!何なんだよこのチョコは!』
『可愛いでしょ?小粒だから練習中でも手軽に食べられるよ』
『「そうじゃない」!』
『凄い。Jyri(ユリ)、日本語も書けるんだ』
呑気な礼之の返事に苛つきながら、ユーリはスマホでメッセージを打ち続ける。
礼之から渡された袋の中身は、クリスマス限定と銘打たれたチョコレートの詰め合わせだった。
別段チョコレートは嫌いではないし、礼之の言う通り小粒のそれは、練習の合間などの糖分補給に良いかも知れない。
しかし問題は、このチョコレートが全て「キスチョコ」と呼ばれる形状をしており、更にそこに添えられていたカードには礼之の文字でこう記されていたからだ。
「次に僕達がキスをするまでの間に」
『どういうつもりも、そのままだよ。僕もこれを口にする度、ユリとのキスを思い出すから』
『安直すぎんだろ!お前はそうかも知れねぇが、俺にとってはただのチョコだ!チョコには罪はねぇから貰ってやるけど、あんま調子に乗んなよ!』
『僕は本気だよ』
スマホに届いた率直な言葉を目にして、ユーリは思わず息を呑む。
『僕の気持ちは昨日のEXとバンケの時の通り。「私の唇は、貴方なしじゃ不幸なまま」。僕は、スケーターとしても1人の男としてもユリに近付きたいんだ』