第6章 初恋の思い出
あずさ「覚えてませんか?あなたが私を助けてくれた日のこと。」
教官「俺がか?」
あずさ「6年前のあの大地震の時。あなたが家の下敷きになった私を助け出してくれました。」
教官「え…。」
あずさ「その傷…。私を助ける時についたものでしょ?」
私は教官の前髪にそっと触れ、額についた傷をなでる。
教官「あの時の女の子がおまえだったのか。でも、怪我させたって同情なら気にすんな。」
あずさ「同情?」
教官「俺は男だから怪我くらい対したことない。」
あずさ「教官はバカですか…?」
そんな理由であなたの側にいたいと思うわけないでしょ。
教官「な、なんだと!」
あずさ「教官は私の手を握りしめて大丈夫だって何度もつぶやいてくれました。そんなことされて惚れないわけがないじゃないですか!」
教官の顔が赤くなる。
あずさ「私はあの時からずっとあなたのことが好きです。でも、10才も年下のあたしなんか相手にしてくれないって、だからせめて側で教官の手伝いをするだけでもいいと思ってました。でも…でも、側にいるともっともっと教官に近づきたくて…私、よくばりですね…。」
泣くつもりはなかったのに、私の目からは自然と涙が溢れる。
ふと体に温かさを感じる。
教官が私のことを抱きしめている。
あずさ「きょーかん?」
教官「黙ってきけ。1度しか言わねーぞ?俺もおまえのことが好きだ。最初はうざいやつとしか思ってなかったけど、いつの間にかおまえに惚れてたらしい。昨日始めて気づいたんだ。おまえが側にいるのを当たり前に思ってたけど、それは違うってこと…。なぁ、これからも側にいてくれ…。」
あずさ「きょーかん…。側にいさせてください…。」
教官の顔が私に近づく。私は目を閉じた。