第9章 増田貴久的錦戸亮。
錦戸くんは…
今も、昔も変わらず
優しい。
言葉や態度がアレだから
誤解されやすいけど…、
心の奥は
優しくて、繊細で
傷付きやすいって
オレは知ってる。
他のメンバーが引き立つように
わざと自分がヒール役を立ち回ってたのも
オレは知ってる…。
昔のオレは、
そんな錦戸くんの奥の奥の部分までは
わからなくて。
言葉のままに、傷付いて。
錦戸くんは
傷付いたオレを見て
また、傷付いて。
そんなコトが
何度か続いて…。
あるとき
ふと、言われたんだ。
「今まで頑張ってきたけど、、
もう……しんどいわ。」
錦戸くんが
弱音を吐くなんて初めてのことで、
オレは驚いた。
そして、
弱音を吐いた相手が
オレだったコトにも―――。
驚いたオレは
思わず、こう言ったんだ。
「僕にできること、ありますか。」って。
ベッドでの錦戸くんは
最高に、イジワルで
最高に、優しかった…。
MCなんかで毒づいたときは
「ます、今日…ごめんな?
ホンマは違うんやで?」
って髪を撫でながら、口付けて。
「大丈夫です。わかってます。」
そう言って、笑うオレに
「ますはほんま…、
笑顔が似合うな。」
そうやって
いつにも増して、
可愛がってくれたんだ――。
結果だけ見れば…
節操なしと言われても仕方がないよね。
最初は錦戸くんに
誘われたから
錦戸くんを
繋ぎ止めるために
身体を重ねたハズだったのに…。
なのに――…。
みんなに報告する前に
オレには直接、
話してくれた錦戸くん。
2グループ分の
歌を覚えて、振りを覚えて、
ギターも練習して
ツアーも、回って
ドラマも、やって…。
そんな錦戸くんに
限界がきてることもわかっていた。
むしろ、8年も一緒に頑張ってくれて
ありがとうとすら思っていた。
いつかはその日が来ることも、
そのとき
関ジャニを選ぶことも、わかっていた。
そのタイミングが、今だったんだな。
ただ、ぼんやりと
そう…思った。
「オレ達もさよなら、ですよね。」
「そらそやろ。笑」
錦戸くんは、困ったように
素っ気なくそう言い放って。
最後まで憎まれ役を買ってでるなんて
錦戸君らしいな…。
ふふっと笑って
愛しさを募らせた。