第11章 良月
そりゃあ、俺が強引に付き合った訳だから、
思い通りに行かないこともあるだろう。
例えば、付き合った日に、一旦家に帰る俺を間違って月島の名前で呼んだ事。
「えっと…蛍が、影山くんと上手くいかなくて、泣き言言いたくなったら聞いてくれるって言ってたよ。」
なんて、全く笑えない冗談を言われた事。
頑張って和奏って名前で呼んだときは、拍子抜けするほど無反応だったくせに、自分はいつまで経っても「影山くん」なんて呼び続ける事。
なかなかキス以上の関係に進めない事。
ふとした時に、寂しそうな顔をして、
その後、取り繕うように無理矢理笑顔になる事。
部活の最中に和奏の視線を辿ると月島がいる事。
和奏とは違うタイミングで、月島が和奏を度々見ている事。
和奏が俺の事、少しでも好きになってくれているのか、自信が持てない事。
思い通りに行かないこともあるって、
最初から分かっていたけど…
俺だって少しくらい手応えが欲しい。
和奏は俺の彼女なんだって…そういう手応えが。