第7章 月白
それから10分程で影山くんから再び連絡が入った。
詳しい家の場所を伝えると、数分でインターホンがなる。
本当に来たんだ…。
インターホンが鳴ってから、やっとこれが現実の事だと気付く。
「突然来て、悪い。」
少し肩が上下に動いている。
走って来たのだろうか…?
「本当に悪いって思ってる?えっと…とりあえず、上がる?」
なんだか、影山くんの必死な様子がおかしくて、笑ってしまう。
右手で入室を促すと、何故かその腕を影山くんに掴まれる。
「おい、これ…月島にやられたのか?」
そう言われ、自分の腕に視線を落とすと、手首に真っ赤な跡が残っている。
「あっ…」
隠しようもない状況に、顔が熱くなる。
「……。無理矢理…されたのか?」
影山くんの声がワントーン低くなる。
無理矢理…。違う。
確かに一方的に縛られたけど…最終的に求めたのは私だ。
「違うの。私が…。私が…知りたかったの。影山くんもさっき言ってたでしょ?本当に蛍じゃないとダメなのかって。私も…その答えを知りたかったの。」
ギュッと、影山くんが腕を掴む力を強める。
「…。今までずっと悩んでわかんなかったもんが、同じ方法でわかるか!」
…。
影山くんの言う通りだ。
自分が馬鹿のようで返す言葉がない。
俯く私を影山くんが見下ろしている。
その視線を痛いほど感じる。
「試すなら…別の方法だろ。」
顔を上げると、「だいたい俺は最初からそう提案したのに…」と影山くんが独り言のようにボヤく。
「月島を忘れられるか試すなら、俺で試せよ。」
思わず笑いそうになって、影山くんの真剣な瞳に笑いを飲み込んだ。
冗談…じゃないのか。