第4章 風月
影山くんも言い忘れた事があったのだろうか?
視線を彼に戻すと、予想外に真面目な表情でこちらを見ている彼に、思わず言葉が繋がらなかった。
「お前、どうしても月島じゃないとダメなのか?」
「え…?」
「俺は…皐月の事が好きだ。お前には泣いて欲しくない。俺が…笑わせたいと思ってる。」
全く予想外の影山くんの言葉に一言も返せない。
「お前が弱ってる時は、一番に俺を頼って欲しいんだ。
すぐじゃなくていいから、俺と付き合う事…考えとけ。」
もう影山くんはこっちを見てはいない。
真っ赤な顔から…。
強引な命令口調から…。
そして、わざと晒された視線からさえも熱が伝わってくる。
私まで…熱い。
自分の顔が赤くなっている事がわかる。
じゃあ。と短く言って、影山くんは去っていく。
どうやって家まで帰ったのか。
その後の時間を過ごしたのか。
全く思い出せない。
ただ、夜になって家を訪ねてきた蛍の顔見て、
あぁ…蛍が怒ってる…。
そんなことさえ、ぼんやりとしか考えられなかったのだ。