第7章 兄の考えと二人の気持ち。
裕Side
突然の兄さんの謝罪に驚いた。
「…なんで謝るんだよ。」
俺はそう聞く。
だってそうだろう。
そもそも、俺が由架を好きにならなければ部署が一緒になることもなかった。
由架がフラれることも、部屋を出ると言うことにもならなかったのだから。
俺が[我慢]をすればすべてが成り立っていたのだから。
「…全部、俺が心配しすぎた結果だ。裕も由架ちゃんも悪くなかったんだ。」
そう言って兄さんは何度も何度も頭を下げた。
そのあと、俺自身が恋愛をしたことがなかったのが心配だったこと。
遊びなんじゃないかと疑ってしまったこと。
職場での恋愛が心配だったこと。
そして何より莉架さんと兄さんの互いの妹と弟であったこと。
あの時兄さんが疑問に思った点をすべて聞いた。
兄さんには兄さんの考えがあって。
偏見でもあったわけだが、他にも沢山の理由があった。
そして、一番の原因は俺達のことを心配していたという理由で。
それを聞いたとき少しほっこりした。
「ありがとう。」
俺がその言葉を口にすると兄さんは俺に、
「ありがとうなんて言われることしてない。なんであんなことしたんだって言われた方が気持ちが楽だよ。」
という。
「じゃあ、あえて責めないことにする。」
俺は少しだけ笑ってそういった。
「あれ、いつもいい子な裕が悪い子だな。」
そう言って苦笑いしながら微笑む兄さんに
「俺は案外悪い子だ。」
と言う。
その日は久しぶりに美味しいご飯を食べた気がした。