第7章 兄の考えと二人の気持ち。
裕Side
「俺から呼び出しておいて、遅れてごめん。」
今日はとある平日の昼休み。
いつも昼休みに休憩をほぼ取らない俺だが、今日はどうしても話したい人がいて珍しく会社を出て昼飯を食べていた。
「別にいいよ、気にしなくて。」
その相手は兄さんだ。
俺が呼び出したのは他でもない。
数週間まえに起きたあの出来事についてだ。
突然押し掛けてきた兄貴たちに、俺と由架が交際していることを伝えると兄さんは無言で帰っていってしまった。
その真相についてどうしても聞きたくて時間を作ってもらい、予定があったのがたまたま今日だった。
「裕は昼飯食べた?」
「まだだ。」
「じゃあ何か好きなの頼みなよ、今日はお兄さんの奢り。」
そう言いながら兄さんは俺の目の前にメニューを広げる。
「あぁ、ありがと。じゃあ…日替わりランチ。兄さんは昼飯は?」
俺がそう聞くと兄さんは「俺もまだなんだよね、同じ日替わりランチにするかな。」といって店員を呼び、日替わりランチを2つ注文した。
「ところで、呼び出した理由って何?」
水を一口飲んでから兄さんは俺に聞く。
「何ってしらばっくれないでくれ。心当たりあるだろう。」
「…」
気まずそうにうつむく兄さんは、見たことがないくらい真剣な顔をしていた。
「裕、お前は本気か?」
兄さんは俺の目を真剣に見つめてそう聞く。
「あぁ、本気だ。」
俺がそう答えると兄さんは
「けれど、立場をわかっているのか?裕は俺の弟で、由架ちゃんは莉架の妹なんだ。俺が反対しなくても他に親や親戚が反対するかもしれない。そんなリスクがあることわかっているのか?」
という。
兄さんの言うことはごもっともだしそれに返す言葉も俺にはなかった。