第4章 私の好きだった人
寝室で出掛ける用意をして、用意が終える頃にはとっくに部長はシャワーを終えてリビングで待っていた。
「すみません、お待たせしました。」
私はそう声をかけると部長は玄関へと向かう。
それの後ろをついて歩いていく。
靴を履いて玄関を出ると少しだけ小雨が降っていた。
しばらく歩いて、コインパーキングに行くとそこには見覚えのある車が止まっていた。
「鍵開いてるから先乗ってろ。」
そう部長に言われ、私はその車へと向かって歩く。
助手席の扉を開けてそこに座って待っていると部長が遠くから歩いてくるのが見える。
間も無くして部長は車へと乗り込み、発信させた。
会社まで十分くらいだっただろうか。
その間は以前のように無言ではなかった。
「体調、落ち着いてきたか?」
「はい、おかげさまで。昨日は話も聞いてもらっていろいろスッキリしました。ありがとうございました。」
「いや、気にするなよ。上司として当然のことだ。」
そんなような会話が続く。
[この時間が終わらないといいな]
そう少しだけ思う。
こう思えているなら、私は部長嫌いを克服できたのかもしれない。
それと共に彼のいった『上司として当然のことだ。』という言葉が心に残る。
彼は[上司だから]私の世話をやくのだろうか。
そして何故それが気になるのか私にもわからなかった。
部長のことが少し気になっているのだろうか。
けどあれだけ、不満があったのに急に少し優しくされただけでそんな気になったりするものなのか。
人を好きになったのが初めてじゃないはずなのにそれに戸惑う。
そのあとも私は一日中、それについて頭のなかで自問自答を繰り返した。