第12章 過去
すぐに仲良くなった3人は、長期休みに入ると3人で仲良く基地に来ることが多くなった。着いてすぐにそれぞれの師匠に教えてもらいながら、訓練を受けたり模擬戦をしたりしていた。いつも勝つのは明希で、2対1でも勝っていたな。明希が入って2年経った時には、もう忍田君と同等の実力を持っていた。これなら実戦でも動けるだろうと思って、私の見回りに明希を同伴させた時、行った先で門が開いた。明希は怯むこと無く近界民に立ち向かって、見事討伐した。しかし、問題はここからだった。
瓦礫を回収して帰ろうとした時、いつの間にか生身に戻っていた明希が、気持ち悪いと言って吐いたんだ。急いで駆け寄って背中を摩ったが、近くに水は無いし、口を拭ける物もない。すぐにトリオン体に換装させて、基地まで抱えて帰った。基地に着いてすぐに回収した瓦礫を研究者に渡して、明希を連れて洗面所に行き口を洗わせた。洗っている間に水を用意して、洗い終わった明希に飲ませたが、気持ち悪いのは悪化したようで倒れてしまったんだ。
取り敢えず医務室に運んで診てもらうと、診断結果はSEの暴走だった。私達はその時初めて、明希にSEがある事を知った。2日後には目覚めると言われた為、2日間基地で預かり、明希が目覚めるのを待った。2日後、明希は目を覚ましてすぐに『迷惑かけてすみません』と言ったんだ。謝る必要ないのにだ。忍田君が何かしてほしい事が無いか尋ねると、『これからも同じ事が起きないとは限らないので、人から離れられる静かな場所で眠っていたいです』と明希は答えた。今すぐは出来なかったが、この基地を建てた時にその部屋を作った。明希が大分回復した頃、SEについて説明すると、明希の能力について話してくれた。判明したのは"人の心を読む能力"と"自分の心を読ませる能力"で、暴走したのは前者だったようだ。1度に処理しきれないほどの情報が入ってきて、気持ち悪くなったらしい。SE持ちは有吾しかいなかった為、SEの制御の仕方を学び、1週間で出来るようになった。
それからは特に暴走する事も無く実戦に出たり訓練したりなど、以前と変わらない日々を過ごしていた。それが一気に崩れたのは、今から6年前だ。
当時ニュースにもなっていたが、潰れた車が見つかったものの、乗っていただろう人が行方不明だと言う報道が流れた。その車は明希の家族の物だった。
