第6章 入隊
布団で横になっていると、コンコンコンとノックが聞こえた。
身体を起こしてどうぞと答えると、入ってきたのはボスだった。ボスはベッドに座っている僕の隣に座った。
僕「どうしたんですか?」
林「お前も迅も我慢しすぎだ。...さっきもそうだが、昼の有吾さんの話をしてる時も我慢してるのバレバレだったぞ」
僕「...」
ボスには全部お見通しだったらしい。有吾さんが黒トリガーになった事は、遊真君に会った時から何となく察していた。それでも、実際に聞くとやっぱり堪える。僕が入隊した時からいなくなるまで、ずっと教えてくれていた大好きな師匠だ。辛くない訳がない。
最上さんだってそうだ。師弟関係ではなかったが、有吾さんがいない時は最上さんに教えて貰っていた。ライバルだけあって、有吾さんの癖もこっそり教えてくれる面白い人だった。
そんな思い入れの強い2人が亡くなった...黒トリガー化したのは今でも信じられない。
ボスが僕を抱き寄せる。そっとトリガーを解除する。生身に戻った事で、溜まっていた涙と一緒に沢山の思いが溢れて来た。
思わず有吾さん、最上さんそして進さんの名前まで出して泣いてしまった。
ボスからタバコの匂いがする。いつもなら苦手な匂いが、今はとても落ち着く。
泣き止むのは案外早かった。
ボスに今まで誰にも話さなかった進さんの事を話そうと口を開いた時、扉の向こう側から悠一の声が聞こえて来た。
2人の会話から察するに、修君達3人が玉狛支部に入隊するらしい。悠一はきっとこの未来が見えてたから遊真君を止めなかったんだと理解した。
ボスは「わかった」と言って僕の頭を撫で、一緒に部屋から出る。悠一は出てきた僕を見て、少し安心したような顔で笑いかけてくれた。
僕も、ちゃんと笑えたかはわからないが笑顔で返した。
3人でボスの部屋で遊真君達を待つ。
軽いノックが聞こえ、ボスがどうぞと言う。入ってきた3人はデスクの上に置かれた紙を見て、ポカーンとする。
ボスの「遅かったな」の一言で我に返った遊真君が、悠一に見えてたの?と問う。
迅「言っただろ?『楽しい事はまだまだたくさんある』って」
そう言ってニカッと笑う悠一は実に嬉しそうだ。
3人がサインした書類をボスがチェックして、3人に歓迎の言葉を贈る。
林「たった今からお前達はチームだ。このチームでA級昇格、そして遠征部隊選抜を目指す!」
