第7章 別離れ
「トシ、いいからお前は行くんだ」
「駄目だ!俺にはあんたを見捨てていくことなんてできねぇ…!!」
「お前までいなくなったら、新選組はどうする!
…トシ…新選組を、頼む」
―俺たちの夢を、頼む。
「馬鹿を言うな!大将のあんたがいなくなって、何が新選組なんだよ…!!」
「…トシ、俺を新選組の大将だというのなら、尚更行かせてくれ。俺は、新選組局長としての役目を果たしに行くんだ…俺以外に、できないだろう?」
「…!」
「今のお前たちを、新選組を生かせるのは、己の首だ。俺はそのことを、誇りに思うよ…だからトシ、
お前はまだ、新選組と共に生きてくれ…」
ー慶応三年四月三日 新選組局長 近藤勇、投降。
「…俺だって、何よりあんたに生きてて欲しいんだよ…!!」
それから歳三は、助命嘆願のために江戸を奔走する。
偽名を名乗っているわずかな執行猶予時間内に、どうにか彼を助け出せないかと、できる限りの力を尽くした。
どうしても、彼を失いたくはないのだ。
幼い頃から共に歩んでここまできた親友を、どうしたら見捨てられようか。
あの人を押し上げて、もっと上まで。
――彼自身が、俺の掲げる『誠』の御旗だから。
できる限りの手を尽くして、俺は宇都宮へと向かった。
彼自身と、彼に託された熱い思いもまた、俺には捨てられなかったから。
―新選組を、頼む。
彼のその言葉だけが、今の俺を動かしていた。
まとまらない思考、落ち着かない心。
この時の俺は、参謀として失格だった。
宇都宮城を勢いで落城させるも、数日で新政府軍に奪回され、あまつさえ負傷をした。
隊の指揮を執らねばならぬ立場にいながら、負傷をして療養を強いられる事態になるなど、以ての外だった。
そして、療養のために会津へ入った頃。
―近藤さんの、死の報せを聞いた…。