第5章 不器用な優しさ
はらり、と手紙から舞い落ちてきた桜の花びらを、そっと手にして。
彼女との想い出がこんなにも鮮やかに甦る自分に、思わず苦笑した。
開いた手紙には、季節の挨拶と、池田屋での新選組の活躍を聞いたとの話、それから体調への気遣いなどが書き連ねられていて。
『京から離れた江戸にも、あなたの噂が届いています。
何でも『鬼副長』と呼ばれているとか…。
貴方が冷酷な人間に変わってしまったのではないか、なんて多摩の人々は心配しています。
きっと他人よりも、何より自分に厳しい貴方のことだから、一人で隊の汚れ役を背負っているのでしょう。
そういった役割も必要なのでしょうが、どうかあまり無理をしないように…。』
最後に綴られていたゆきの言葉にくすり、とひとつ笑みをこぼして。
手紙を丁寧に折りたたんでから、俺は返信のために筆を手に取った…。