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愛慾の鎖ーInvisible chainー【気象系BL】

第12章 以毒制毒


雅紀side


全てが白日の下に晒されて、誰も責めることなんてできないと感じた。

殺意を持ち続けていた智も、そんな智を囚われの身にしていた松本も、そして主人である松本の父を殺めてしまった澤でさえも…


親心にも似た深い愛情故に犯してしまった重い罪

とはいえ、人を殺めたことは許されることではない。


澤が警官達に半ば引き摺られるように部屋から連れ出されようとしていると、

「…ごめんなさい…」

項垂れていた翔君は、その後ろ姿に詫びていた。

一瞬動きを止めた澤は黙って首を横に振ると、屈強な男達にそのまま連行されていった。


智はそんな翔君の背中に手を当てたまま、私を見上げる。


その瞳はこれまでとは違う光を秘めたもので、

「雅紀さん…、しばらく僕を貴方の傍に置いて下さいませんか?」

彼は穏やかな声でそう言った。

翔君はその言葉に息を呑み、その真意がわからないといった表情で智を振り返る。

けれど私は

「智がそうしたいというなら、私は構わないが…」

今の智の瞳に秘められた優しさなら信じられると、直感した。


もう今までの智とは違う。

全てを奪われた理由を漸く知ることができた彼は、憑き物が落ちたように穏やかな顔をしていた。


「ありがとうございます…」

彼は私にひとつ頭を下げると、困惑している翔君に向き直る。

そして、力無く落ちた手を取り…

「ごめんね、翔君…、こんな時に酷いって思うかもしれないけど、僕はここには居られない。」

諭すように言葉を紡ぐ。

「どうして…?一緒にいようって約束したのに…」

「いるよ、この先はずっと翔君と一緒にいたい…。だから翔君も乗り越えて?潤様と…二人で、澤さんが罪に手を染めてまで取り戻して欲しいと願ったものを、守って…?そうすれば…僕の父様も母様も許してくれる気がする…」

「…許す……?」

「うん…、哀しい連鎖を終わらせることができた君となら、共に生きていってもいいって…、僕の幸せを喜んでくれるんじゃないかと思うんだ」


智は愛する人に、自分の足で立ち上がって欲しい一心で寄り添うのではなく、敢えて辛い別れを迫った。
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