第32章 【お・ま・け】
「ロン、どうしたんだ?そのリボン?」
「クリスマスプレゼントを包んでたリボンだよ。それを……こうして……こう使うんだよ!」
ロンはクリスの左腕と自分の右腕、そしてハリーの左腕とクリスの右腕をそれぞれ赤いリボンで結んだ。
「どう?これなら僕らがリボンを解かない限り1人で出歩く事は出来ないから、安心して眠れるだろう?」
「それは、確かにそうだけど……」
「それじゃあ、そろそろ寝ようか。正直、僕もう眠くて仕方ないんだよね」
ハリーはそう言うと、クリスの手を握って、空いている方の手で器用に自分とクリスに毛布を掛けた。反対側のロンも同じようにした。春と言えどまだ夜は寒く、必然的に3人ともピッタリとくっ付く体勢になる。
静けさの中、暖炉の薪がパチパチと燃える音が響いく。つないだ手から温もりが伝わって来て、クリスはこれまでに無いほど安心していた。
「ねえ、クリス」
「うん?」
不意にハリーが話しかけてきた。クリスは首だけハリーの方へ向けた。
「僕、君が好きだよ。例え君が『継承者』であっても、それだけは変わらない」
「――ハリー……」
「僕も!僕も君が好きだよ。だから覚えていて、何があったって、僕らの友情は永遠だって」
ハリーに続き、ロンまでもが心の内を打ち明けた。クリスはその言葉が嬉しくて、嬉しくて、涙が出てきた。それを悟られない様に、枕代わりのクッションに顔を埋めた。
「はっ、恥ずかしい奴らだな!!もうっ、私は寝るぞ!!」
素直になれずにそう言うと、2人が声をそろえて「それこそクリスだ」と言って笑った。クリスは繋いだ両方の手をギュッと握ると、この友人たちと廻り合わせてくれた運命に感謝しながら、心地よい眠りについた。