第6章 ジンベエザメの試練 みたび
「・・・・・・おさまったな」
「・・・・・・は、はい・・・」
多分、20分ぐらい・・・だろうか。雷が鳴り響いている間ずっと、俺はヒカリを抱きしめ続けた。やっと外が静かになってきて、俺は少しだけ腕の力を弱めた。
「・・・大丈夫か?」
「はい・・・」
俺と同じぐらいの高さにあるヒカリの顔を見ると、その瞳には少し涙が滲んでいた。こんな体勢にでもならなければ、俺とヒカリの視線が一緒になる、なんてことはないだろう。
「ほんと、苦手なんだな、雷」
「はい・・・・・・でも、宗介さんがぎゅってしてくれてたから、すごく安心できました」
「・・・そうか」
「・・・この前も、ずっと側にいてくれたし・・・本当にありがとうございます」
吐息がかかりそうな距離。ヒカリがにっこりと笑う。
・・・ずっとこんな近くでこいつの笑った顔を見ていられたら、とも思う。
・・・だが、そろそろ限界だ。さっきまではヒカリが怖がっているからと無心でこの状況を受け入れたが、もう無理だ。まだ少し濡れてる髪とか、薄いTシャツ一枚から伝わってくる柔らかい胸の感触とか、華奢な腰回りとか、相変わらずちらほら目に入ってくる白い太ももとか・・・すぐ側にある唇、とか。
こんな状況じゃなかったら、すぐにでもその唇を奪ってやりたいが、今は多分、一回でも触れたらもう歯止めがきかなくなる。
少し不自然かもしれないが、俺はそのままヒカリを抱き上げて床に下ろそうとした。そうしないと本当にどうにかなりそうだった。
「・・・・・・だいすき・・・宗介さん・・・」
ちゅっと小さな音がして、ヒカリの唇が俺の頬に触れた。
その瞬間、ずっとずっと鳴り響いていた危険信号が止んだ。だけど、その代わりに俺の中で何かがぷちんと切れた。
「・・・ヒカリ・・・」
「ふ・・・んんっ」
ヒカリの腰を強く抱き寄せると、少し深く口づけた。
部屋に二人きり。ぶかぶかのシャツだけを着た彼女を膝の上にのっけて。『だいすき』なんてキスされて。
・・・それで我慢できる男なんておかしいだろ。