第35章 ジンベエザメの試練 番外編
「それじゃあね、宗介くん。またいつでも遊びに来て」
「宗介くん、バタバタ追い出しちゃってごめんね。またご飯食べに来てね!今度は何がいいかしら?」
「あ、いえ・・・俺の方こそ、お忙しい時にお邪魔してしまって・・・色々お世話になりました」
一晩明けて。今日もこれから仕事があるヒカリの両親に合わせて早めの朝食(量についてはまあ、言うまでもない)をご馳走になった俺は、長島家みんなに見送られて玄関の前にいた。
「はい!私、駅まで宗介さんを送っていきます!」
いつの間にかコートと、そして白いマフラーを身に付けたヒカリがパタパタと嬉しそうに俺の隣にやって来た。
「寒いし、無理しなくていいぞ?」
「いいの!行きたいんです!」
「もう、ヒカリったら。宗介くんだって今日はご実家に帰ったり忙しいんだから、引き止めたりしないで早く帰ってくるのよ?」
「わ、わかってるもん!い、行きましょ、宗介さん!」
「ああ・・・それじゃあ、本当にありがとうございました」
「どういたしまして!気を付けてね」
ヒカリに促されたので、もう一度両親に向かって頭を下げると俺は駅に向かって歩き出した。その隣をヒカリが歩く。
色々・・・色々大変だったけど最終的には親父さんにも認めてもらえたみたいだし、来てよかったと思う。
「宗介さん、早くあそこの角、曲がりましょ!」
「そんな急いでどうしたんだ?」
なぜか早歩き・・・というよりも小走りに近いヒカリ。ずんずんと俺よりも先に行ってしまう。
「だ、だってまだお父さんとお母さん見てると思うから・・・宗介さんと手、繋ぎたいもん・・・だから早く!」
「はっ!んな走って転ぶなよ・・・」
「宗介くん」
走っていくヒカリを笑って見ていると、不意にすぐ後ろから声が聞こえた。
「!!!・・・は?!え・・・」
「ごめんね。ひとつ、言い忘れたことがあったから」
びくっとして振り向くといつの間にかすぐ後ろにまでヒカリの父親が来ていた。
「あ、っと・・・なんですか?」
「今回は来てくれてありがとう。宗介くんと過ごせて楽しかった」
「あ、いえ、こちらこそありがとうございました」