第21章 卒業【最終回】
「…あれから2ヶ月だもんな」
「…桜ちゃんも…今日来られれば良かったのに」
「仕方ねーよ、アイツだって向こうの学校で卒業式だろーし」
「…」
沖田さんは桜ちゃんがいなくなっても何も変わることなくいつも通りだった
だけど俺は知っている
授業中、沖田さんはよく桜ちゃんの席をボーッと見つめていることが多かった
本人にからしたら無意識なんだろうけど、それだけ彼女がいる毎日が当たり前になっていて、そんな二人を見つめる俺達も当たり前だと思ってたんだ。
「桜ちゃん、元気ですかね」
沖田さんの隣に立って同じく景色を見つめる
「…さあな」
素っ気なく返ってきた言葉に俺は少し眉を下げた
きっと沖田さんもみんなも、寂しいのは同じで、だけど言葉にするともっと悲しくなるから敢えて言わないんだ
付き合ったその次の日にお別れなんて俺だったら辛くてとてもじゃないけどまともでいられない。
でも沖田さんは桜ちゃんのことをとても大切に想っていて、だからこそ彼女の背中を押した
それがきっと彼なりの不器用な愛情表現なのだろう。
「オーイ沖田くん」
突然の銀八の声に驚いて振り向く俺と目だけを向ける沖田さん
「俺さぁ教室に忘れもんしちまったからよ~ちょっと取ってきてくんない?」
「はぁ?自分で行きゃいいじゃねーですかィ、何で俺が」
「それがさ~実は沖田くんの大切にしてたもんを置いてきちまったんだよね」
沖田さんは一瞬だけ眉間に皺を寄せて渋々だるそうに屋上を出て行った
残った俺と銀八はお互いに無言で再び景色を見つめた
「…先生、沖田さんの大切なものって…一体何を?」
銀八は何も言わずただ視線を校門に向け微笑んだ
そこにいたのは、
「えっ…」