第15章 交差する想い
『えーっ!帰る!?』
「あぁ」
突然の高杉の言葉に驚いて、慌てて彼を引き止めた
『なんで…まだ花火打ち上がってないのに!』
「花火なんてどっから観ても変わらねェだろ。それに、離れたとこから観る方が俺はいいんだよ」
『そ、そういうのもアリだとは思うけど…でも私は間近でこの花火を観るために高杉と来たのに…』
「じゃあこんな食うな」
そう言って高杉はすっかり軽くなってしまった財布を私に見せつけた
『…じゃあ今度は私が高杉に何か奢るよ!って言ってもジュースくらいしか無理だけど…買ってくるからここで待ってて』
「…炭酸以外な」
『うん!』
やっぱり高杉は優しい。
『ほんと人って見かけによらないよねー…』
私は少し離れたところにある自販機で二人分のジュースを買った
『にしてもここ薄暗いな…』
足元が見えないくらい暗くて少し不気味だ
早く戻らないと高杉に怒られそうだな。
そんなことを考えていると奥の方で誰かの話し声が聞こえてきた
顔ははっきりと見えないけど…この声どっかで…
すると次の瞬間、一発の花火が打ち上がった
『え…』
一瞬にして周りの音が聞こえなくなった
私の目に映ったのは、沖田と美々ちゃんが暗闇でキスしている姿で
カランッ
私は頭が真っ白になって持っていたジュース缶を地面に落としてしまった
振り向いた沖田の目は大きく見開かれ
「吉野…?」
名前を呼ばれた瞬間私はその場から走り出した
「沖田くん!追って、早く!!!」
後ろから美々ちゃんの怒鳴り声が聞こえて沖田の声も聞こえる
『イタッ!』
途中暗くて足元が見えず派手に転んでしまった
擦りむいた箇所から血が滲み出てきた
浴衣も砂だらけでみっともない
「吉野!っ待ちやがれ!」
来ないで来ないで来ないで!!