第8章 nervous
「……可愛い」
「あはは、シンパシーでも感じてんの?」
「そうかもしれない」
フンボルトペンギンに釘付けでミリ単位でさえも動かない女に男はクスリと微笑んだ。いろんな動物を見て回った結果かれこれここに10分はとどまっている。
(ペンギンも可愛いけどペンギンにかじりついてるつばめちゃんの方が可愛いよ!! ……なんて言ったら何言われるかわかんないよなぁ……)
女に好意を伝えたいものの伝えたところで「意味がわからない」とか「面白いね」なんて言われるのだろう。
(……あ、そうだ!!)
男はここで本日の野望を思い出し、ポケットからスマホを取り出した。そしてそそそと女の隣に並び、ペンギンと女と自分が入る位置を調整する。
「つばめちゃん、こっち向いて」
「え?」
パシャリ
画面に収まった画像に男は幸せを噛み締めた。
(く~っ!! 撮れた!! 撮れたツーショット!!)
女は一瞬のことで驚き固まってしまった。