第6章 negotiable
「ツッキー、入るよ」
「ああ、なに、お見舞いのつもり?」
幼馴染みが家に来たということはたぶんそうなんだろう。あんまり長居されても困るからなるべく早く帰ってもらおうと思っていた矢先、来客は視線を泳がせた。
「あー……それもあるんだけど……」
「よっ、月島」
「……」
(ですよねー!)
あからさまに不機嫌な顔になった部屋の主を見て山口は予想通りでもあった。
「コンニチハ、センパイ」
「おいおい、全然そんなこと思ってないだろ~。
休み中申し訳ないけど、話、あんだわ」
男のいつも通りの優しい笑みを湛えながらも奥から込み上げる威圧には逆らえないものがある。
「……ちょうどよかった。僕もお話ししたいことがありました」
男の笑顔ははっと鼻で笑ったかのような上から目線のもの。
恋敵二人の様子に山口はヒヤヒヤするばかりであった。