一泊二日温泉旅行に行ってみた【実l況l者/全l身l組】
第12章 pm 7:03
日がすっかり落ちた頃、電車を降りた私は、家まで送ると言う二人の申し出を断って、一人家路へ
レトさんは「この旅行の主催者だから」と、
キヨくんは「まだ体力があるから」と言ってたけど、
さすがに今日はゆっくり休んでほしい
名残惜しい気持ちを残して、二人と別れた
家に着いて荷物を下ろすと、着替えもせずにそのままベッドに寝転がる
一人になると気が緩んだのか、疲れがドッと押し寄せる
ぼんやりする思考で振り返る二日間
色んな場所に行って
美味しいものを食べて
温泉に入って
贅沢して…
たくさんドキドキした
ずっと曖昧だった二人の気持ちが鮮明になって
急に近くなった距離
感じた体温
胸に残る言葉
思い返すと嬉しさと苦しさがぐるぐると頭を巡る
なんだか…
モヤモヤする…?
二人のどちらかを選ばなくちゃいけない苦しさじゃなくて、もっと別のモノ…
正体の掴めない気持ちがプカプカと浮かんでくる
とりあえず着替えだけでも、とベッドから起き上がった時、上着のポケットに入れた携帯が続け様に振動する
確認すると、レトさんとキヨくんから旅行中の写真がたくさん届いていた
リゾート列車の展望室からの写真
温泉街をバックに撮った写真
豪華な料理に囲まれて嬉しそうにしている写真
酔っ払って撮った写真
朝の寝ぼけ顔の写真
光が差し込む美しい景色の写真
バーベキューを楽しんでいる写真
三人で写ってる数十枚の写真
私が真ん中で両端に笑顔のレトさんとキヨくん
それは無意識に
そっと指を伸ばす先は画面越しの彼の顔
触れた瞬間、胸がギュッと潰されるような感覚が襲ってくる
三人でいた時には思わなかった感情
あんなにドキドキしたのに
あんなに近くで触れたのに
モヤモヤの正体は、不安…?
私が欲しかったのはあの言葉
私だけに向けられた「好き」という言葉
どんな台詞よりも
その一言が欲しかった、なんて……
そんな考えがよぎった時
手に持った携帯が再び振動する
大袈裟なほど肩が大きく跳ね、
慌てて携帯に目を移す
液晶に表示される、今考えていた人物からの着信
その名前を見ただけで息が止まりそうになる
胸に広がる甘い痛み
この痛みは…私の答え