第2章 マトリちゃんと雨と傘
関「泉、悪いがこれを〇〇まで届けてくれないか?」
泉「はい、分かりました!」
関さんから書類を受け取り、地図を確認する。ここからはそこまで遠くない道のりだ。徒歩でも大丈夫だろう。
由井「1人で大丈夫か、良かったら俺が」
関「由井、あの資料は終わったのか?」
由井「く…これはただ泉が心配なだけなのに…」
青山「お前はまず自分の仕事を心配しろ」
由井さんがしょんぼりした様子で自分のデスクに戻って行った。由井さんは心配性だなぁ…まあ私のDNA目当てだろうけど。
関「でも泉、近い距離ではあるが、十分気をつけてくれ。何かあったらすぐに連絡してくれ」
今大路「関さん本当にお父さんみたいですよ」
夏目「これじゃ孝太郎さんと変わりませんよ」
青山「おい夏目、孝太郎なんかと一緒にしたら関さんに失礼だ」
由井「失敬な、俺だって関さんと同じで泉のDNAを含めて心配なんだ」
泉「あはは…」
そんな皆のいつものやり取りを見ながら、苦笑いを零す。でも自分が大切な仲間の1人だと思ってもらえてる事が嬉しくなった。由井さんだってきっとDNAだけじゃない…はず。
泉「関さんも由井さんも心配してくれて嬉しいですが、大丈夫ですよ」
由井「む」
関「そ、そうか…じゃあ、よろしく頼む」
泉「はい」
関さんがまだ少し心配そうな顔をしていたので何となく行きづらくなったが、関さんだって皆だって自分の仕事がある、私の見送りで時間を取らせてしまっては申し訳ない。
泉「すぐ戻りますから」
そう言って私は部屋を出ようとした時、ふと今日は不安定な天気だと朝のニュースで言っていたことを思い出し、折りたたみ傘をバックに入れて、部屋を出た。