第21章 ep21 交差
濡れた髪をタオルで乾かしながら、談話室へと向かっていくと、既にそこには先客がいた。
(徹くんだ・・・)
談話室のテレビに、ビデオを繋ぎ、イヤフォンを伸ばして今日の試合を見ている。
普段はよく喋るのに、こうして自身の試合を見る時は、静かに分析している・・・
(あ・・・4セット目・・・)
りこが気になっていた4セット目を、及川も見ている。
2人とも思っていたことは同じだった。
りこはなるべく驚かせないように、そっと及川の肩を叩いた。
くるりとこちらを向き、驚いたように目を見開いてそれからイヤフォンを外す及川。
「りこっ!?ごめん、勝手につけちゃってて」
「ううん、私もこのセット見ようと思ってたの。良かったら、一緒に見よ」
そう言って、及川の座っているソファーに並ぶように腰を下ろす。
及川は片方のイヤフォンを差し出し、りこは左耳、及川は右耳にそれぞれイヤフォンをつけて試合を観る。
りこは気になった所をノートに書き出し、及川は先ほど同様静かに鑑賞している。
ーーー・・・
「お、カップル発見」
「おーおー、合宿中にお熱いですなぁ」
歯磨きを片手に、部屋へ戻ろうとしていた松川と花巻、そして岩泉が先の談話室で肩を並べる主将と主務の背中を見つけた。
「でもなんか、いちゃいちゃしてるって感じじゃねーな」
「確かに」
興味本位で2人に気づかれないように忍び足で近づく花巻、それに続く松川。岩泉はそれをその場で静観する。
近くまで来ても、全く気づかない2人。
何を見ているのかわかると花巻はがっくりと肩を落とした。
「なんだよゲームの映像かよ!色気ねぇよなぁ〜」
突然背後から聞こえた大きな声に、及川とりこはびくりと肩を震わせて振り返った。
「だぁ〜、びっくりした!何なのマッキー!」
「何なのじゃねぇよ!2人きりで何見てんのかと思ったら、バレーの映像かよ!マジでバレー馬鹿だなお前ら」
がっかり、と言ったように花巻は肩を落とす。
「ほんっとに何!いきなり来て馬鹿呼ばわりしてさー!!」
及川が花巻を追いかけ回す。