第26章 ep26 心満
及川はキスをする。
りこの髪に、額に、頬に、鼻に、そして唇に・・・
今まで躊躇ってきた時間を埋めるように、何度も、何度も。
唇を塞ぎ、舌で唇の形をなぞる。
歯をノックし、口を開かせれば、上顎、歯列をなぞるように舌を這わす。
それから舌を絡め、時には吸い上げる。
くちゅ、くちゅと言う水音が部屋に響き、聴覚も麻痺させていく。
「んっ・・・・・・ふ・・・・・・ぁっ」
唇を重ねたまま、及川はりこを抱き上げて布団へと移動する。
優しく白いシーツのかかるそこへ、彼女を下ろすと、もっと深く、角度を変えて彼女を貪る。
(あぁ、たまらない・・・・・・)
味わうほど、溢れる吐息と甘い声。
零れそうになるお互いの唾液すらも刺激になる。
唇を離すと、はぁ・・・とどこからともなく吐息が漏れる。
熱を含んだ瞳で至近距離で彼女を見つめると、頬を上気させて少し苦しかったのか、肩で息をしている姿が、無償に愛しかった。
「ね・・・もう止められないけど、いい?」
りこの体に跨り、そして彼女の頭の両隣に肘をつき、まるで囲うように、腕の中に閉じ込め、こつんと額を合わせた。
止められない、もう止めるつもりなんてない。
彼女の心を、体までも自分のものにしたい。
こんな気持ちになるのは初めてで、きっと彼女が最後だろう。
りこは及川の服の裾をきゅっと握りしめて、絞り出すように言った。
「どうしよ・・・ピンチサーバーで入れられるより緊張する・・・」
その言葉に、及川はニヤつく表情を止められない。
こんな時にでも、頭はバレーばかりのりこ。
でもきっとそれくらい、彼女の中ではバレーボールの存在は大きくて、一度手放そうとしたあの頃の彼女がいたのを、及川は忘れてはいけないと、思った。
「そういうバレー馬鹿なお前が大好きだよ」
もう、愛おしくてたまらない、という気持ちを体現するようにりこの頭を撫でる。
それから首筋に顔を埋める。
「ん・・・っ・・・」
辿るように舌を這わす。
微かに香る石鹸の匂いが、りこの匂いと混じりあって嗅覚までもを翻弄する。