第4章 幸せな日常
むせて咳をしていると、イタチが横に来て背中を擦ってくれた。
「ご、ごめんってばね、ツバキちゃん。」
『は、はい。コホ..気にしないでください。』
私はそう答えて、少し微笑んだ。その表情をみて、クシナさんはホッとしたように、息をはいた。
私がそんなクシナさんに困ったように笑っていると、
「じゃあ、次はこっちにおいで!ツバキ、」
と、言いながらミナトさんが私に両手を広げた。
『えっ、』
「えっ、」
そして何故かイタチも反応した。
「じゃあ、イタチくんはこっちに来るってばね!」
「えっ、」
なんかクシナさんめっちゃイキイキしてるんだが、気のせいか?
「ほら、おいで!」
ミナトさんは変わらず私に向かって手を広げている。
ここで恥ずかしがった方がもっと恥ずかしいよね、よし、
私はそう考えを巡らせ、ミナトさんに抱きついた。
イタチも同じ考えにたどり着いたようで、大人しくクシナさんに抱き締められている。
「ツバキは軽いね」
『そうですか?』
「うん。俺達にも子供が出来たらこんな感じかな?」
『.....』
私はその時、無意識に少し暗い表情をしていたらしい。
ミナトさん達に子供は生まれる。でも、その子供が生まれた日は...ミナトさんとクシナさんの命日だ。
それがわかっている私はどんな表情をすればいいかわからなくなっていた。
「?どうしたの?」
『い、いえ...!えっと、ミナトさん達に子供が生まれたら、私たちのこと構ってくれなくなっちゃうかな、と思っただけです。』
私は首を振った後に、そう誤魔化した。まあ、あながち嘘でもないし、いっか。
「?そんなことないよ。言ったろ?君もイタチくんも、俺らは自分の子供のように大切に思っていると、だから構ってあげないなんてことはしないよ?むしろもっと構ってるし、可愛がってると思うな」
ミナトさんはそう言うと、ニコッっと笑った。
私はミナトさんの首に手を回し、ギュッと抱きついた。
嫌だな...
ミナトさんと..クシナさんが死んじゃうなんて...会えなくなってしまうなんて...
この笑顔が見れなくなるなんて...
私は出てきそうな涙を堪えるためにさらに強く、ミナトさんに抱きついた。