第8章 もう帰るんだ……
「いいにおい……お腹すいた……」
台所から花宮が姿を現した。
私を見ると、一度台所に戻ってからおわんを手にこちらにやってくる。
「セットしてあったシジミの鍋でみそ汁作ったけど、よかったか?」
「え、うん……っていうか、花宮作ってくれたの?」
私が平静を装いつつ尋ねると、花宮は無言でおわんを差し出してきた。
おわんからは湯気とともに食欲をそそる味噌の香りがたっている。
一口すすってみる……おいしい。
「昨日の残りものも温めてあるけど食えるか?」
「うん、食べれる……おみそ汁おいしい、ありがとう」
「ああ」
花宮はそれだけ言うと、再び台所に戻っていった。
もう一口すする……おいしい。
そういえば、ソファーまで運んでくれたのって花宮なのかなぁ……。
よくは知らないけど、後処理とかもあるよね。
花宮がしてくれた?
うそ、ほんとに?
私は再びおみそ汁に視線を落とす。
なんか、なんか……。
「……んふふ」
もう一口すすってみれば、それはやっぱりおいしかった。