• テキストサイズ

君の計算を狂わせたい【黒バス/花宮】

第4章 そういえば自己紹介もまだだった




画面が一瞬暗転した後、向かい合う二人のキャラクターの間をSTARTの文字が踊った。

私達はカチャカチャとキャラクターを動かしはじめる。
 
 
あれ?
 
うまい、けど……なんていうか。

 
「花宮、手加減してる?」
 
 
画面が止まった。

彼がセレクトボタンを押したのだ。

 
「おい、このコントローラー壊れてるだろ。必殺技だけできないとか、何の嫌がらせだ」
 
 
花宮のキャラクター、基本的なダッシュやジャンプの動きは無駄のない動き(悔しいけど私よりうまい)なのに、どういうわけか必殺技を出さない。

格闘ゲームは必殺技を出してなんぼなので、当然私の方が優勢になる。

 
「それしばらく使ってなかったからなぁ。調子悪いのかも」
 
「んだよ……」
 
 
花宮はため息をつくと、少し真剣な表情で黙り込んだ。


「どうしたの?」
 
「いや、別に……」
 
 
ふせていた瞳を一瞬こちらに向けると、花宮はそのまま立ち上がった。

 
「ゲームはやめだ。コントローラーが壊れてるんじゃあ、試合にならねぇ」
 
 
それもそうか。
 
私はゲーム本体の電源ボタンを押すと、テレビの画面も消す。

 
今度こそお風呂に入ろう、と立ち上がって、ふと考える。


花宮って……今日、うちに泊まるんだよね? 


考えてみたら、我が家に男の人を入れるのって初めてのことだ。

私、異性と交友がないからなぁ。
 

「花宮……って、今日うちに泊まるんだよね?」
 
 
いちおう、確認のつもりで聞くと、花宮は眉をひそめた。

たぶん、今さらそんなこと聞くなと、そういうことだと思う。
 
というかこの状況って、もしかしてけっこうやばいのでは?
 
わ、私……犬になれとか言われちゃったけど!
 
ひゃあ〜〜〜!!
 
 
と、ひとしきり悶えていると、冷めた目線に気がついて、私はぴたりと止まる。
 
花宮の「ふはっ」とバカにするような笑い声に、私は赤面した。
 

くそぉ……なんか恥ずかしいことしちゃったじゃん。
 

「私、お風呂入るから!!」
 
 
照れ隠しにそれだけ言うと、私は洗面所へと急いだ。



/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp