第28章 【先輩】×【失恋後】

｢空先輩。好い加減、教えてください。｣

これで何回目だろう。先輩の好きな人の事を聞くのは。

私だって、いい加減聞き続けるのも飽きて来た。
ならもう聞かなきゃ良いのかも知れないけど、私だって気になる。

｢だめ！今度ね。｣
ふふ、と子供のように笑う。
やっぱりそういう所は、子供らしくて先輩っぽくないと思ってしまう。

｢…もう…。｣

あの日、今度と言われてだいぶ立ったのに、未だにその今度が来ることは無くて、


｢俺より、雨衣ちゃんは…あれから好きな人は出来た？｣
｢…私ですか？｣

｢うん、そう。｣

｢…正直、良く分かりません。｣
前はあの人の事が好きで、振られた時はすごくすごく悲しかった。
だからその時は、その分早く他の人を好きになって、
早くあの人を忘れたいとかそんなことばっかり思ってて。

でも、空先輩に色々言ってもらってから心はすっきりしたけど
恋とかはあんまり考えたくなくなってしまった。

空先輩のことだって…気になるけど、
それを恋とか、恋愛感情とかにしていいのかは分からない。


｢うーん、そっか。｣
空先輩は、少し悲しそうな顔をした。
あれから、良く私の相談に乗ってくれたりしてくれる。

そういう時だけは、本当に頼りになる人だ。


｢先輩は、きっとモテると思いますけど…私みたいな思いはして欲しくないんです。｣
｢ありがとう。…雨衣ちゃんは、本当に優しいね。｣


｢雨衣ちゃん。｣
｢はい？｣

｢君は本当に鈍感なんだから。｣
｢俺は、雨衣ちゃんが好きだよ。｣


｢返事は…また君に好きな人が出来た時に教えて。俺、待ってるから。｣
｢…は、はい。｣

最初は驚いたけど、なんだか少しだけ納得している自分も居た。
あの時空先輩が言っていた言葉が、どこか気になっていたから。

私がもう一度誰かを好きになるなら、先輩みたいな人があってるのかな？
…なんて。

少しだけまだ怖いけど、恋だってまだしたい。から。
勇気を出すのも大事なのかもしれない。


｢空先輩。｣
｢ん？｣

｢案外、すぐに返事が出来るかもしれません。｣

私がそう言うと、先輩は、

｢うん。待ってるね。｣と言いながら、優しく笑った。