第27章 【吸血鬼】×【ツンデレ】
「好きな所…ね。」
考えてみても、そんなに直ぐには浮かばないわけで。
前にあったことや、可愛いとか思った事を探ればなんだか懐かしくて。
やっぱり俺は雨衣の事を好きなんだって、今更だけど分かった。
それを直ぐに伝えなきゃいけない気がして、急ぎで雨衣に電話を掛ける。
「…蒼依?」
電話には、思ったよりすぐに出てくれて助かった。
電話に出た雨衣の声は、思ったより冷静なもので。
「あんたの好きな所、ちゃんと考えた。」
「まず、最初に言えるのは好きな理由は血が美味しいからじゃない。
雨衣の事が好きだから、その血も好きなの。」
「好きな所なんて、言える訳ないでしょ。
1つだけでも言ったら…雨衣はすぐに舞い上がって…調子に乗るから。」
「だから言わないし、俺だけの秘密。だから…別れるなんて言うな…バカ。」
途中から鼻を啜るような、涙を堪えるような、そんな声がした。
「それより、雨衣。今どこにいるわけ? 絶対外でしょ。」
「ご、ごめん。」
その言葉は、ドアが開く音と同時に、電話越しからも近くからも聞こえた。
「…ずっと外に居たの?」
「…うん、ごめん…。」
「ちょっと、色々説明してもらいたんだけど…?」
全ては雨衣が仕組んでいたらしい。
俺の本音が知りたいだとか血が目当てなだけか気になるとか、そんな理由で。
でも、それを聞いて全てに納得がいった。
怒らないその反応も、電話に出る速さにも、出た後の冷静さにも。
それにしても全部俺の本音が知りたいからやった事だなんて…本当に子供みたいで、
本当に呆れる。
そんな所も好きとか言ったら、またされることくらい俺は分かってるから、
絶対に言ってやらない。