第25章 【甘えん坊彼氏】×【風邪】
「雨衣…ほんっとごめん…」
あー… 、と零しながら鼻声で私に言った。
「そんな、謝らないで。空が心配で来ただけだから。」
そう言って、彼の額に触れる。
やっぱり熱い。
「熱、ありそうだね。」
「…雨衣の手、冷たくて気持ちいいからずっとこうしててよ、」
「うん。…分かった。」
朝起きたら突然、助けて。とメッセージが来たから焦ったけど、
風邪を引いてしまっていたとは。
「大丈夫…じゃ、無いよね。」
こういう場に慣れてないから、どうしたらいいか分からない。
「何かして欲しい事とかある?」
なにか私に出来ることがあればと思って、質問をした。
「……もっと……こっち…。」
ぐい、と体を引き寄せられて空の方へと倒れ込む。
「!ごめん!今退くから。」
重いからと急いで離れようとしたけど、それは出来なくなってしまった。
「…だめ。行かないで。」
「…空?」
あんまりこんな風に甘えられる事無いから少し嬉しいかも。
でもそういう訳には行かないし、体を起こしながらまた聞いた。
「欲しいものとかは?無い?」
「………い。」
「え?」
「雨衣が欲しい。…ちょーだい。」
折角体を起こしたのに、また引き寄せられ顔が近付いていく。
思わず目を瞑ってしまう私を見て、彼は力なく ふふ、と笑った。
「…可愛い。移すつもりは無いから安心してよ。でも、治ったら良いでしょ?」
疲れてしまったのか だから、約束。と 言ってすぐ、眠ってしまった。
今のうち、寝ているうちに色々しちゃおうかと動こうとしたけど、
手を掴まれたままで。少し動かせば取れたかもしれないけど、
起こすのもどうかと思った私はそのままでいる事にした。
今はこうする事しか出来ないけど、治ったらきっと___。