第18章 【弟】× 【好きな人】
きっかけは、いつもの様に突然な質問からだった。
「姉ちゃん、好きなやつ居るの?」
突然の問いだったけど、別に驚きはしない。
昔から、流れとは全く関係無い問いが突然来るものだから、
もうとっくの昔に慣れている。
…この話題だって、直ぐに変わるはずだ。
「あー、まぁ。居るけど。」
正直に話す。本当は言いたくないけど、嘘つくとめんどくさいしなぁ…
「ふぅん、誰。」
やっぱり、こうなるよね。でもまぁ、ここまで言っちゃったら仕方ない。
「先輩だけど。**先輩。」
ずっと前から好きだった先輩。こんな私にも、優しくしてくれた。
恋人が居るみたいだし、叶わないのは分かってるけど。
「あの人、俺は嫌いかな。」
「…」
「俺、あの人の事を兄ちゃんなんて呼びたくないから。」
「それ言いたいだけなら出てってよ。部屋あっちでしょ。」
「やだ。姉ちゃん説得するまで出てかない。」
「…説得ってなんなの。」
意味が分からない。急に説得だなんて、何を考えてるんだか。
「あの人彼女居るのに?」
「…別に、好きでいる分には関係無いじゃん。」
伝えてしまったらきっと、関係が崩れてしまうけど
伝えなければ、何も変わらない。そのままだから。
「でも、」
「姉ちゃんは、辛いでしょ?」
視線を感じて蒼依の方を見ると鋭い目でこちらを見ていた。
まるで、射抜くような。そんな目。
「そんな事…ない、よ。」
その目に戸惑いながらも、否定する。
「でも、俺は辛い。」
「蒼依に私の気持ちなんて、分かんないよ。」
その目を見て居られなくて、つい逸らして言葉を返す。
「…姉ちゃんって、本っ当に馬鹿だよね。」
「っはぁ、!?」
蒼依の言葉に、ついムカッとして声を上げる。
それでも気にすることなく、蒼依は話を続けた。
「姉ちゃん。」
「俺の話、聞いてくれる?」
ほらまた、話題が変わる。
「俺にも好きな人が居るんだ。」
…変わらなかったか。
まぁ、私のじゃなくなっただけマシか、
「ほら、こっち見てよ。雨衣
…姉ちゃんなんて、もう呼ばないから。」
蒼依が近づいて、距離が縮まる。
「俺は、好きな人に振り向いて貰えないの、けっこー辛いんだけど。」
「ねぇ、雨衣…? ここまで言えば分かるでしょ?」