第12章 【天然S】×【キス】
「雨衣。」
確かに、名前が聞こえて振り向くと、額に、ちゅ。と唇が触れた。
「えっ。」
「ごめんね、つい。嫌だった?」
少し落ち込んだ風になった。
「嫌じゃ…ない。」
私がそういうと、空はにっこり笑った。
「じゃあ…もっといい?」
「…うん。」
ちゅ、ちゅっ。と額から頬へ頬から唇へとどんどん下に下にされる口付け。なんだか、とても擽ったくて。
「…っ。」
唇が離されて、空は言った。
「…足りない」
「え?」
考える暇もなく、唇に唇を当てられる。そして口の中には、舌が入り込んできた。
「ん…ッ…はぁ、っ。」
何度も何度も絡められる舌に、私は翻弄されるだけで、付いていくのに必死で。
「…っ、」
やっと離された所で、私は息を整えた。
「はぁ、はぁ…」
「疲れちゃった?…でもまだだーめ。」
「俺が満足するまで辞めないから。」
それだけ言われて、また口を塞がれた。さっきもされたばかりだから、息の仕方はなんとか覚えた。
「んっ…」
鼻で息をしても、声は抑えられなくて。なんだか恥ずかしくなって空をじっと見た。
「可愛い。」
今度は耳元で囁かれて、私は感じてしまった。
「…!」
「感じちゃった?」
空の言葉に、私の顔はどんどん赤くなっていくばかりで。
「無理させてごめんね?」
とそれだけ言って、1度私にまた軽くキスをした後、本を読み始めた。
熱くなった体は、ずっと冷めないままで。私はまだまだキスしてほしい。なんてそんなことを思っていた。
こんなタイミングで辞めるなんて、凄くタイミングが悪い。自覚が無いけど、そういう所が意地悪だ。
「ねぇ…っ、」
「ん?」
「キス、してよ。」
恥ずかしい。と思いながらも、ちらりと空の方を見ると空は、優しく笑って、私に近づく。
「…ん。」
ちゅっ、と音がした。と思ったら、ベッドの上に、押し倒される。
「…さっきので足りたつもりなのに…」
「…したくなっちゃった。」