第11章 ⊿【彼氏の兄】×【看病】
「雨衣ちゃん…。」
「もう、呼び捨てでいいですよ。」
はぁ、はぁ、と息を切らして言うと今度は頬へと軽くキスをされた。
「ごめんね…色々。雨衣。空には内緒にしてくれるかな。」
蒼依が謝った途端、始まりから全て思い出して自分のした行動に涙が零れた。
「って、泣いてる?」
「ッ、ごめ、なさい。」
心配そうに見つめる蒼依にただただ謝る。
されたのは私なのに、どうして蒼依に謝っているのだろうか。
「ごめんね。本当。」
「もし…バレても、雨衣は悪くないから。俺が無理矢理雨衣を襲ったんだから。」
「…って、そんな男の顔はもう見たくないかな。帰るよ。俺。」
私は、散々無理矢理酷いことしておいて、こういう時にはどこか優しい蒼依の腕をつい掴んでしまっていた。
どうして、こんな相手を引き留めるのか。
「…行かないで」
自然と、出ていた言葉はそんな一言だった。
蒼依はにっこり笑って、また椅子に座った。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -