第10章 【クーデレ】×【慰め】
「雨衣…?帰るよ。」
「…うん。」
少し、元気がないと思った。
どーせあのうるさい男教師に色々言われたのだろう。
「…大丈夫?」
「うん。」
そうは言っても、大丈夫には見えず。くしゃりと頭を撫でると、堪えていたのか涙が零れた。
「…」
ちゅ。と静かな教室に音がする。
つい泣いている彼女を見て、キスがしたくなった。
「はい。あげる。」
唇を離して、ポケットからハンカチを探し雨衣に渡すと、今度は嬉しそうに笑った。
「このハンカチ…」
雨衣が受け取ったハンカチを見ると、そのハンカチは、前に雨衣から貰ったハンカチだった。
気にせず使っていたため、つい何の躊躇いもなく渡してしまっていた。
「大事に使っててくれてありがとう。」
彼女の笑顔に、持ってて良かったと思う。
「…少しは、元気出た?」
「うん。ありがとう空。」
暗かった表情から、少し笑って言った。
でも、その笑顔はさっきと違って作り笑いに見える。
「無理して、笑わなくていいよ。俺の前では…」
「思い切り、泣いて?」
余程酷いことを言われたのだろう。
俺に抱きつくと、雨衣は涙を流した。
「…何も言わなくていいから。」