第74章 【親友】×【弟】
親友の弟を好きになってしまった。
これは許されないことなのだろうか、
ううん、いいよね…?
「ねえ、いつ会えんの?…早く会いたい。」
「明日、姉ちゃん彼氏と出掛けるんだって。…だから遊びに来てよ」
彼氏のいる親友からはよく、恋人を作れだとか言われる。
…まさか自分の弟のことが好きだなんて、思ってもいないだろう。
「…それって、何時頃に帰ってくるの?」
「泊まってくっていってたけど」
「わかった、明日行くね。」
「ん、待ってる」
そう言った声はどこか嬉しそうに聞こえた。
見慣れたインターホンを押して待つ。
少しして出てきた弟くんと家の中に入ると、何だか変な感じがした。
考えてみれば、親友がいない時に家に入ったのは初めてだ。
この家に来る時はいつも親友がいて、
弟くんと会う時は大体外か、自分の家だったから。
だから、なんとなく悪いことをしているような気がするんだと思う。
2階に上がって、親友の部屋と反対のところへ入って行く。
見慣れないシンプルな部屋で親友のとはやっぱり違う。
ソワソワしていたら、ぎゅうっと抱きつかれた。
「……やっと会えた……おれ、ずっと寂しかったんだけど。」
久しぶりで、いつもよりドキドキしてる気がする。
これで付き合っていないなんて、変な関係だ。
…って言っても、私が返事を待ってもらっているだけなんだけど。
でも、もうそれも今日で終わりにする。
「今日、返事しに来たの。」
そう伝えると弟くんは慌てたように私を離した。
顔を見ると、嫌そうな顔でぶんぶんと首を横に振る。
「いい、そんなの聞きたくない。すぐじゃなくていいって言ったじゃん」
「それは私が待てないから」
なんだかもっと悲しそうな顔になってしまった。
振られる、って思わせてしまっているのかな。
ちゃんと伝わるような上手い言葉が出てこない。
変に言葉にするより伝わるかもしれない、
なんて思って、そっとキスをした。
「…え、?」
弟くんは、驚いた顔で私をみつめる。
「私、蒼依くんが好きだよ。」
改めてちゃんと、言葉にして伝えると蒼依くんはふわり、嬉しそうに頬を緩ませた。
「俺も、好き。大好き。」
想いが通じてもう一度、ふたり、口付けをした。
嬉しくて、暖かくて。幸せで。
それは親友にはまだ言えない、秘密の恋。