第40章 【片想い】×【夏】
夏になると、決まって田舎のおばあちゃんの家に行く。
それが私はとっても楽しみだった。
大好きなおばあちゃんに会える、それもあるけれど一番の理由は別にあった。
「ちょっと行ってくる。」
「はいよ。お夕飯前には帰っておいで。」
これから、一番の理由に会いに行く。
おばあちゃんの家から少し歩くと階段があって、そこを上ると目指す家がある。
その家に行くと、私が会うのを楽しみにしていた人が居る。
その人はいつも寝ていて、私が起こすと驚いて起きる。
…はず、なんだけど。今日はなぜか家に向かう階段の下から一段目の所で座っていた。
もちろん、ちゃんと起きて
その目がどこを見ているのかは私には分からなかった。
「蒼依さん。」
私が声を掛けると、いつものようには驚かず、ただ私に気付いて笑った。
こっち、と手招きする。
蒼依さんのいる所まで少し早歩きで歩いていく。
「座って。少し話をしない?」
蒼依さんは、隣をとんとんと叩いて言う。
「…?はい!」
そっと隣に座って、話をする事にした。
「僕と君が初めて出会った日のこと、覚えてる?」
「…はい。」
もちろん、覚えている。それはとても印象的な出来事だったから。