第39章 【片想い】×【告白】
二人きり。緊張して、落ち着かない。
「……あの、本当にありがとう。」
「…ん。」
折角色んなことを話すチャンスなのに、会話も続かない。
少しだけ静かになる。先に声を出したのは、私では無かった。
「…市倉。」
「…?」
「…………足、早く良くなるといいな。」
「…うん。ありがとう。」
もう一度お礼を言う。
「良いって、俺がしたくてした事だし。」
そう言って笑った顔を見て、私は改めて思う。
―ああ、やっぱり、私…この人の事が好きだ。
「…私、蒼依くんが好き。」
気がつけば、口に出していた。
「いつも、後ろの席から蒼依くんを見てた。優しいところとか、笑った顔とか声とかすごく好きで。やっぱり蒼依くんは優しくて好きだなって、今改めて分かった。」
自分でも驚くほど、言葉がスラスラと出てくる。
蒼依くんは驚いた顔をしていた。
「……って、ごめん…。急に言って驚いたよね……。」
その顔で我に返る。反応が怖くて下を向く。自分の手は、また震えていた。
私は、なんてことをしてしまったんだろう。
「つ、伝えなくていいかもって思ってたんだけど、突然言いたくなっちゃって…あはは…。」
必死に言い訳する。顔が、上げられない。
「ご「まって、」
もう一度謝ろうとするも、遮られてしまう。
きっと私は、振られてしまう。
「……すげー嬉しい。」
聞こえてきた言葉に、耳を疑う。
「…え?」
思わず顔を上げると、蒼依くんは真っ赤な顔をしていた。
「俺も、ずっと市倉の事が好きだったから。」
ずっとずっと好きだった。
その言葉を聞きたかったけれど、きっと無理だと思っていた。諦めていた。
だから涙が出そうになる。
「あのさ、」
「…うん。」
「改めて、言わせて。」
深く頷く。そして静かに待った。
蒼依くんは一度深呼吸をして、真剣な表情で私を見た。
「好きです。俺と付き合って下さい。」
答えは決まっている。
「…!」
その日。片想いが、両想いに変わった。