第35章 【初恋】×【10年後】
「…着いた。」
久しぶりに来たけれど、あの頃と何も変わってない。
ここには、あの日から一切来ていなかった。
来てしまったら、思い出して会いたくなってしまう気がしたから。
2人で良く肩を並べて座ったベンチに1人で座る。ここから見る景色が、私は好きだった。
「会いたいなぁ…。」
ぽつり、そう零す。
当たる風が心地よくて、眠くなってきた。
そして、彼女はそのまま1人、ベンチに眠ってしまった。
「…!驚いたな。」
眠る姿を見て、1人の男は驚いて目をぱちくりさせた。
眠るその人は、昔と変わらない、自分が探していた大切な人だと気が付いたから。
そして、すぐに嬉しそうに笑って――眠る彼女の頬に口付けをした。
まるで眠り姫が王子様の口付けで目が覚める様に、眠って居た彼女は目を覚ました。
「……ん…」
眠ってしまっていたらしい。眠い目を擦って、伸びをする。
「おはよう。雨衣ちゃん。」
私を見て、にこり、その人は微笑んだ。それは、
懐かしい、その人だった。
「空…くん?」
私がそう聞くと、
その人は嬉しそうに笑って、右手を差し伸べて言った。
「久し振り、迎えに来たよ。」
伸ばされた手を取って立ち上がる。
昔はこうして、この場所からもいつものように手を繋いで帰った。
「…会いたかった。」
「雨衣ちゃんも来てたなんて、びっくりした。
丁度今日、会って話そうと思ってたから。」
優しい声。聞き覚えは無いけど、どこか懐かしい。
「私も、会いたかった。」
泣きそうになるの堪えて、ちゃんと伝える。
すると、空くんはずっと背中に隠していた左手を出した。
左手には、小さな花束が握られていた。
「俺と付き合ってください。」
嬉しくて、堪えていた涙が零れた。
握られていた花束には、ひまわりの花も見えた。
私がひまわりを好きな理由は、好きな絵本に出てくる事。
それともう1つ。私はひまわりの花言葉がすごく大好きだった。
――私はあなただけを見つめる。
「…はい。喜んで。」
涙を拭って、告白の返事を告げると、差し出された花束を受け取った。